共進知性学に基づく、脳由来状態指標を活用した
SQ・AI主体活用率向上型探究・協働学習最適化システムの開発

本計画は、共進知性学を上位理論とし、SQ 4領域×21項目を中心成果指標、AI主体活用率を中間実践指標として、非侵襲EEG、TSPタイプ視線データ、シンマイクロクレデンシャル履歴基盤を統合し、探究・協働学習の個別最適化と社会実装を図る研究開発計画である。

1. 研究課題名

共進知性学に基づく、脳由来状態指標を活用したSQ・AI主体活用率向上型探究・協働学習最適化システムの開発

2. 背景と問題意識

現在の探究学習・協働学習は、成果物、発表、提出率、満足度といった結果指標には強いが、学習の途中で何が起きているのかを十分に捉えられていない。どこで集中が切れたのか、どこで認知負荷が上がったのか、どこで教材構造に迷ったのか、どの対話が学びを深めたのか、どの支援が主体性を引き出したのかが見えないため、教育改善が属人的になりやすい。

さらに、生成AIの普及により、学習者がAIをどう使うかが成果に大きく影響するようになった。しかし現状の評価は、『使ったかどうか』や『禁止したかどうか』の水準に留まり、『主体的に活用できているか』『AIを用いて思考・検証・再構成・実践接続ができているか』を測る指標が不足している。

その結果、教育現場では、AI活用が学びを深める支援にもなり得る一方で、受動的消費や思考停止を助長するリスクもある。ここに、本提案が解くべき問題がある。すなわち、探究学習・協働学習の過程を可視化し、AI活用の質まで捉え、それを個別最適化へ変換する仕組みが必要である。

3. 研究目的

本提案の目的は三層構造で整理できる。第一の目的は、探究学習・協働学習場面における学習者の状態変化を、非侵襲EEGとTSPタイプ視線データにより可視化することである。第二の目的は、その状態情報を学習ログ、対話ログ、成果物、振り返り、履歴基盤と統合し、AIによる介入最適化へ変換することである。第三の目的は、その結果として、SQの向上、AI主体活用率の向上、学習成果の向上、創造性支援の実現を達成することである。

より具体的には、短期では『理解停滞の減少』『継続率の改善』『対話参加度の改善』『AI主体活用率の初期上昇』を狙い、中期では『SQ重点項目の改善』『自己効力感と学習エンゲージメントの改善』『学習成果の改善』を狙い、長期では『学び続ける習慣』『地域・社会への価値還元』『初期シーズの社会接続』を狙う。

4. 中核概念の定義

3-1. AI主体活用率の明示的定義と概念説明

本提案では、AI主体活用率を三つの言い方で定義する。第一に、最短定義として「AI主体活用率とは、AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的達成のために主体的に使いこなしている人の割合である。」とする。第二に、社会的説明定義として「AI主体活用率とは、AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的に応じて問いを立て、結果を確かめ、学習や仕事や生活に役立てている人の割合である。」とする。第三に、普及のための標語として「AI時代の識字率、それがAI主体活用率」と位置づける。

これら三つは内容的には同じ核心を共有する。すなわち、AI主体活用率は、AIを『使ったことがある人の割合』ではなく、『AIを自分の課題解決、学習、協働、創造、生活改善のために主体的に使いこなしている人の割合』を意味する。したがって、AI主体活用率は利用頻度の指標ではなく、利用の質と主体性の指標である。

本提案がこの概念を必要とする理由は、生成AI普及後の教育現場では、同じ『AI利用』であっても質的差が極めて大きいからである。ある学習者はAIの出力をそのまま受け取り、ほぼ無批判に転記する。他の学習者は、自分の目的を明確にし、問いを工夫し、出力を比較・検証し、必要に応じて修正し、最終的な判断と責任は自分で引き受ける。両者を同じ『AI利用者』として数えるだけでは、教育効果も人材育成効果も見えない。AI主体活用率は、この質的差を可視化するための概念である。

また、AI主体活用率は、共進知性学においてSQの代替概念ではない。SQが人と人、人とAI、学習者と地域の相互作用の中で育つ総合的知性であるのに対し、AI主体活用率はそのうち『人とAIの相互作用』局面における行動的発現を切り出して測る中間指標である。したがって、AI主体活用率は上位概念ではなく、SQの一部がAI活用場面においてどの程度実践化されているかを測る指標として理解される。

教育実装上の説明としては、AI主体活用率は『AIを読む人からAIを使う人へ移行できているかを見る指標』とも表現できる。ここで『読む』とは、AIの出力をただ受け取ることを指し、『使う』とは、自分の目的に従ってAIを位置づけ、問い・検証・再構成・実践接続までを自らの判断で行うことを指す。この意味で、AI主体活用率は、AI時代の自立度、学習自立度、実践自立度を測る基礎指標でもある。

共進知性学は、人間の知性を個体内部に閉じた能力としてではなく、人とAI、人と人、学習者と地域、知識と実践が相互作用しながら共に進化する過程として捉える研究・実装枠組みである。ここで知性は、知識量や単純な正答率ではなく、問いを立てる力、他者を理解し協働する力、AIを道具として使いこなす力、地域課題へ接続する力までを含む動的なものとして定義する。

この理論において、SQは中心的な到達概念である。SQは、他者理解、社会的気づき、協働的行動、価値創出・社会接続を統合した、人と社会の間に成立する総合知の指標である。探究学習・協働学習の成果を、単なる知識定着ではなく、人間的成長と社会的実践力として捉えるために、SQを主評価に置く。

一方、AI主体活用率は、SQそのものではない。AI主体活用率は、SQのうち『人とAIの相互作用』場面における実践的発現を扱う中間指標である。すなわち、目的設定、問いの設計、出力の検証、再編集、成果接続というAI活用行動がどれだけ主体的に行われているかを示す。研究モデルとしては、SQ向上を主目的とし、その過程をAI主体活用率で観測する。事業モデルとしては、AI主体活用率を高める教育実践を入口とし、その結果としてSQ向上を実現する。この双方向性が、共進知性学の特徴である。

本節で扱うAI主体活用率は、前節で示したとおり、最短定義では「AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的達成のために主体的に使いこなしている人の割合」であり、研究運用上の定義では「AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的に応じて問いを立て、結果を確かめ、学習や仕事や生活に役立てている人の割合」である。この二つの定義は、前者が簡潔な概念核、後者が教育・研究で運用しやすい説明定義という関係にある。

5. 理論枠組み

共進知性学は、人間の知性を個体内部に閉じた能力としてではなく、人とAI、人と人、学習者と地域、知識と実践が相互作用しながら共に進化する過程として捉える研究・実装枠組みである。ここで知性は、知識量や単純な正答率ではなく、問いを立てる力、他者を理解し協働する力、AIを道具として使いこなす力、地域課題へ接続する力までを含む動的なものとして定義する。

この理論において、SQは中心的な到達概念である。SQは、他者理解、社会的気づき、協働的行動、価値創出・社会接続を統合した、人と社会の間に成立する総合知の指標である。探究学習・協働学習の成果を、単なる知識定着ではなく、人間的成長と社会的実践力として捉えるために、SQを主評価に置く。

一方、AI主体活用率は、SQそのものではない。AI主体活用率は、SQのうち『人とAIの相互作用』場面における実践的発現を扱う中間指標である。すなわち、目的設定、問いの設計、出力の検証、再編集、成果接続というAI活用行動がどれだけ主体的に行われているかを示す。研究モデルとしては、SQ向上を主目的とし、その過程をAI主体活用率で観測する。事業モデルとしては、AI主体活用率を高める教育実践を入口とし、その結果としてSQ向上を実現する。この双方向性が、共進知性学の特徴である。

本提案では、SQとAI主体活用率の関係を一方向ではなく循環構造として仮定する。すなわち、他者理解、協働、自己調整、価値創出といったSQが高いほど、学習者はAIを目的志向的に使いこなしやすくなる。他方で、AI主体活用率が高まる教育実践を通じて、問いの質、検証態度、協働姿勢、価値再定義力が育ち、再びSQが高まる。

研究上の仮説としては、短期ではAI主体活用率が先に変化しやすく、中期以降にSQの重点項目へ波及する。具体的には、AI協働力、学習適応力、自己認識、問題解決力、共創意思などが先行変化し、その後に組織理解、価値再定義力、システム思考などの高次項目へ広がるとみる。

この仮説に基づき、実証では、AI主体活用率を中間指標、SQを中心成果指標としてモデル化し、介入前後の変化量と相互関連を分析する。

6. SQ 4領域×21項目の研究上の位置づけ

本提案では、SQを次の4領域×21項目で構成する。これはユーザー提供の『未来の学びの基盤』資料に示されたWiSQ Coach の4領域21項目を、研究用に定義し直したものである。各項目は、概念定義、探究・協働学習場面での行動例、主な観測ソースを併記し、教育実装と研究評価の両方に使えるよう設計する。

上記21項目は、TSIS の三因子構造(Social information processing / Social skills / Social awareness)を土台にしつつ、探究学習・協働学習・地域実践・AI協働を扱うために第四領域として『共進知』を加えた提案独自の運用モデルである。したがって、現時点では『研究上の構成モデル』であり、採択後に予備調査、専門家レビュー、因子分析、関連指標との相関検証を通じて妥当性を高める。

本提案で用いるSQ 4領域×21項目は、既存の単一尺度をそのまま援用したものではなく、社会的知性研究、協働学習研究、社会的メタ認知研究、地域実践研究を統合した提案独自の運用モデルである。したがって、本提案は『既に完成した公的21項目尺度』を主張するものではなく、『既存理論に基づき4領域×21項目を構成し、段階的に妥当性を検証する』枠組みである。

理論的出所の第一は、Thorndike以来の社会的知性研究である。社会的知性は、他者を理解し、人間関係の中で賢く振る舞う能力として古典的に定義されてきた。第二は、Silvera, Martinussen, Dahl による Tromsø Social Intelligence Scale(TSIS)であり、21項目・3因子からなる短く実用的な社会的知性尺度として広く参照されている。第三は、協働学習研究、社会情動的相互作用研究、社会的メタ認知研究である。これらは、共同的問題解決やオンライン協働において、相互調整、他者視点取得、社会的メタ認知、社会情動的支援が成果に強く関与することを示している。

本提案では、これらを踏まえ、TSISの三因子を骨格にしつつ、学校・地域・企業・AI協働の文脈で必要となる『組織知』と『共進知』を厚く定義した。とくに共進知は、AI協働、変化感知、価値再定義、システム思考など、生成AI時代の実践知を含む点で、既存の社会的知性尺度を教育実装向けに拡張した部分である。

妥当性検証は、内容妥当性、反応過程妥当性、内的構造妥当性、他変数との関連妥当性の順で進める。内容妥当性では、教育学、心理測定、協働学習、地域教育、AI教育の専門家レビューを行い、項目と概念の対応を確認する。反応過程では、認知インタビューと振り返り記述により、学習者が想定した意味で項目に回答しているかを確認する。内的構造では予備調査後に探索的因子分析、本調査で確認的因子分析を行う。他変数との関連では、協働成果、教員評価、自己効力感、エンゲージメント、地域実践参加度、AI主体活用率との相関を見る。

7. AI主体活用率の研究上の位置づけ

AI主体活用率は、既存の公的完成尺度ではない。自己調整学習(SRL)理論と UNESCO のAIコンピテンシー枠組みを基礎に、AI活用場面での主体性をデジタルトレースとして操作化した提案独自の複合指標である。ここで主体性とは、AIを受動的に消費するのではなく、目的設定、問いの設計、出力の検証、必要に応じた修正、成果や行動への接続を行うことである。

理論的土台の第一は、Zimmerman や Pintrich による SRL 理論である。SRL では、目標設定、方略選択、モニタリング、自己修正、自己反省が重要な過程とされる。AI主体活用率は、この過程をAI利用行動へ写像したものとして設計する。第二は UNESCO の AI competency framework for students / teachers であり、人間中心性、倫理、応用、創造、責任ある利用が中核に置かれている。AI主体活用率は、これらのうち、AIを用いた応用・創造・批判的関与の実践的発現を教育現場で測るための指標である。

代表的観測指標は五つの下位過程に整理する。①目的を持って使う:目的記述の有無、初回入力の明確さ。②問いや方略を調整する:プロンプト修正回数、再質問回数、複数案比較の有無。③出力を批判的に検証する:根拠確認、再検索、確認要求。④必要に応じて修正・再構成する:出力後の再編集率、自己判断の追加度。⑤成果や行動へ接続する:成果物提出率、AI出力の実利用度、学習・業務・地域実践への接続度。

ただし、これらは『多ければ良い』単純指標ではない。再質問が多いのは混乱の可能性もあり、編集が多いのは初回出力の不適合を示す可能性もある。そのため、各指標は課題文脈、成果物、振り返り、発話ログと組み合わせて解釈する。また、近年のトレースデータ研究は、トレース指標は理論に接地して解釈すべきであり、think-aloud や自己報告、成果物評価との三角測量が妥当性向上に有効だと指摘している。本提案でも、内容妥当性、反応過程妥当性、内的構造妥当性、他変数との関連妥当性、利用結果の妥当性を段階的に検証する。

付録Bでは、AI主体活用率の運用定義を改めて明示する。AI主体活用率とは、AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的達成のために主体的に使いこなしている人の割合である。教育・実装上の説明としては、AI主体活用率とは、AIを受け身で消費するのではなく、自分の目的に応じて問いを立て、結果を確かめ、学習や仕事や生活に役立てている人の割合である。さらに社会的普及のためには、「AI時代の識字率、それがAI主体活用率」という表現を用いる。

この定義に基づき、本提案ではAI主体活用率を次の対比で理解する。受動的AI利用とは、AIの出力をそのまま受け取る利用である。主体的AI活用とは、目的設定、問いの設計、結果の比較、根拠確認、再編集、実践接続を伴う利用である。したがって、AI主体活用率は、単なる利用量や接触回数ではなく、『主体的AI活用者』が対象集団の中でどの程度存在するかを示す比率である。

運用上は、個票レベルで主体的AI活用者を判定し、その集団割合を算出する。判定には、目的記述、問いや方略の調整、出力の批判的検証、修正・再構成、成果や行動への接続という五つの下位過程を用いる。これらはSRL理論とUNESCOのAIコンピテンシー枠組みを基礎にしており、AI主体活用率は『AIを使ったか』ではなく『AIを使いこなせているか』を測る。

8. 研究方法

本提案では、非侵襲EEGを主たる脳由来状態指標として扱う。用途は能力診断ではなく、集中、認知負荷、疲労、情動安定といった状態変化を把握し、教育介入のタイミングや方法を最適化することである。可搬型EEGにより授業・協働場面を計測し、アーチファクト除去、品質確認、特徴量抽出を行ったうえで、状態推定に用いる。

補助指標としてTSPタイプ視線データを用いる。視線は、どこで視線が停滞したか、どこで探索が起きたか、どこを俯瞰しようとしたか、どこで再読が必要になったかを示し、EEGで見えた認知負荷の意味づけを強める。EEGだけでは『高負荷』が『深い思考』なのか『混乱』なのか判別しにくいが、視線が加わることで教材構造に起因する停滞か、高次の統合かを推定しやすくなる。

さらに、シンマイクロクレデンシャルは、達成履歴、再学習履歴、対話履歴、成果物履歴を束ねる継時的文脈基盤として機能する。これにより、『この学習者はどのような条件で理解が進みやすいか』『どのような時にAIを主体的に使いやすいか』『どのような条件で発想が広がりやすいか』を時間軸の中で捉えることができる。

9. ソリューション全体像

本提案のソリューションは、SQを主評価、AI主体活用率を中間評価、脳由来状態指標を状態把握、AIを介入最適化に使う四層構造を核にする。ここへTSPタイプ視線データとシンマイクロクレデンシャル履歴を補助的に組み込み、探究学習・協働学習・創造性支援を一体化する。

学習者が課題に取り組むとき、EEGと視線で状態と教材理解行動を把握する。同時に、学習ログ、対話ログ、振り返り記述、成果物を収集する。AIはこれらを統合し、教材提示順、問いの粒度、チーム編成、休憩タイミング、伴走コメント、AI利用の促し方を個別最適化する。学習者はAIから一方的に答えを受け取るのではなく、自分の問いを磨き、出力を検証し、再編集し、成果へ接続する支援を受ける。

また、学びの中で生まれたアイデアは初期シーズ登録機能に保存され、非公開・時刻記録付きで蓄積、再編集、熟成される。これにより、探究学習は『やって終わる活動』ではなく、未来の研究、事業、地域実践の種を育てる場へ変わる。

10. AIによる介入最適化ロジック

AIは、学習者の代わりに考える装置ではない。今の状態、学習履歴、対話過程、成果物傾向、AI主体活用率の変化を踏まえ、学び方と考え方とAIの使い方を前進させる伴走基盤として機能する。

学びのアドバイスでは、①今の状態に適した学習法、②認知負荷に応じた教材順序、③理解を助ける問いの粒度、④休憩や刺激の入れ方、⑤協働相手や役割、⑥AIを主体的に使うための問い直しや検証の促し、を提示する。アイデアへのアドバイスでは、①着想の焦点化、②関連分野との接続、③逆方向からの問い直し、④次に調べるべき論点、⑤小さく検証する方法、を提示する。

実証は、通常運用群と介入群の比較を基本とする。比較対象は、同一教科・同一学年・近接時期の通常運用クラス、または前年度同科目通常運用とする。短期は8〜12週間、中期は1学期〜半年、長期は1年程度を想定する。

評価対象は、継続率、課題完遂率、教材理解停滞箇所、対話参加度、集中維持時間、テスト得点、習得期間、SQ重点項目、AI主体活用率、自己効力感、学習エンゲージメント、アイデア提出数、初期シーズ登録件数、アイデア多様性、初期シーズ再編集率などである。

9. 仮説

仮説1:AI主体活用率は短期介入で先行的に上昇する。

仮説2:AI主体活用率の上昇は中期的にSQ重点項目の改善と関連する。

仮説3:EEG・TSPタイプ視線・履歴基盤・AI介入を統合した群は、通常運用群より継続率、課題完遂率、対話参加度で優位な改善を示す。

仮説4:初期シーズ登録・再編集支援は、創造的成果物と社会接続の可能性を高める。

10. 評価指標とKPI

短期KPIは、継続率+15%、課題完遂率+20%、教材理解停滞箇所−25%、対話参加度+20%、AI主体活用率の初期上昇、アイデア提出数増加、初期シーズ登録件数の確認を想定する。短期では特に『介入が現場で回るか』『AI主体活用率が初期的に動くか』が焦点である。

Ⅲ. 本事業の提案書〔審査用補足資料/非公開〕

中期KPIは、テスト得点+10%、習得期間−15%、SQ重点項目+0.4SD、AI主体活用率の安定的向上、自己効力感+0.3SD、学習エンゲージメント+0.3SD、アイデア多様性の向上、初期シーズ再編集率の向上を想定する。中期では再現可能な運用モデルの整備も成果に含む。

Silvera, D. H., Martinussen, M., & Dahl, T. I. (2001). The Tromsø Social Intelligence Scale, a self-report measure of social intelligence. Scandinavian Journal of Psychology, 42(4), 313–319.

UNESCO (2024). AI competency framework for teachers.

11. 妥当性検証計画

妥当性検証は、内容妥当性、反応過程妥当性、内的構造妥当性、他変数との関連妥当性の順で進める。内容妥当性では、教育学、心理測定、協働学習、地域教育、AI教育の専門家レビューを行い、項目と概念の対応を確認する。反応過程では、認知インタビューと振り返り記述により、学習者が想定した意味で項目に回答しているかを確認する。内的構造では予備調査後に探索的因子分析、本調査で確認的因子分析を行う。他変数との関連では、協働成果、教員評価、自己効力感、エンゲージメント、地域実践参加度、AI主体活用率との相関を見る。

ただし、これらは『多ければ良い』単純指標ではない。再質問が多いのは混乱の可能性もあり、編集が多いのは初回出力の不適合を示す可能性もある。そのため、各指標は課題文脈、成果物、振り返り、発話ログと組み合わせて解釈する。また、近年のトレースデータ研究は、トレース指標は理論に接地して解釈すべきであり、think-aloud や自己報告、成果物評価との三角測量が妥当性向上に有効だと指摘している。本提案でも、内容妥当性、反応過程妥当性、内的構造妥当性、他変数との関連妥当性、利用結果の妥当性を段階的に検証する。

また、妥当性検証のため、小規模予備調査では専門家レビュー、認知インタビュー、think-aloud、成果物評価、教員評価との照合を行う。本調査では因子分析、信頼性係数、相関分析、群比較を行い、測定モデルの改善を図る。

本提案は、脳由来信号を用いるが、過剰な脳科学神話には依存しない。EEGは能力診断ではなく状態把握に限定し、解釈は視線、ログ、成果物、履歴基盤と組み合わせて行う。ガンマ帯も学習効果の直接保証指標とはせず、注意・知覚統合・高次認知処理の補足指標として慎重に扱う。

運用上は、個票レベルで主体的AI活用者を判定し、その集団割合を算出する。判定には、目的記述、問いや方略の調整、出力の批判的検証、修正・再構成、成果や行動への接続という五つの下位過程を用いる。これらはSRL理論とUNESCOのAIコンピテンシー枠組みを基礎にしており、AI主体活用率は『AIを使ったか』ではなく『AIを使いこなせているか』を測る。

12. 倫理的配慮

17. 倫理・法務・データガバナンス

本提案は人を対象とする脳由来信号の取得を含むため、倫理・法務・データ保護を重視する。脳波データは診断や選別ではなく、学習支援とサービス改善に限定して用いる。本人同意、撤回可能性、目的限定利用、データ最小化、匿名化、公表統制を基本原則とする。

未成年者が含まれる場合は保護者への説明と同意取得も適切に行う。TSPタイプ視線データは個人監視ではなく教材理解行動の把握と支援最適化のために用いる。AI主体活用率評価も能力選別ではなく教育改善のために用いる。初期シーズ登録は非公開管理とし、アクセス権限、保存期間、削除・撤回手順を明示する。

13. 年次計画・実装展望

18. 本選相当フェーズで提示する証拠セット

初期市場は私立高校法人向け探究学習・協働学習支援市場とする。理由は、成果責任が明確で、導入判断が法人単位で行われ、導入効果を比較的短期間で示しやすく、大学PBLや社会人学習への拡張もしやすいからである。

本提案が創出するのは、知識を教える市場から、人が問い、協働し、AIを主体的に活用し、学び続け、着想を生み、社会に価値を返していく力を可視化し、育て、循環させる市場への転換である。教育市場、創造性支援市場、ウェルビーイング市場の交点に立つ点に中長期的な魅力がある。

横展開先として、大学PBL、生涯学習、企業リスキリング、地域共創を想定する。学校では探究における主体的AI活用、企業では業務改善や新規事業支援、地域では課題解決のためのAI活用として意味を持ち、共通中核としてSQ・AI主体活用率・学習支援ロジックを維持できる。

株式会社AI教育ラボは、共進知性学を理論基盤とし、SQ評価設計、AI主体活用率評価設計、探究学習・協働学習の教育介入設計、AI解析、学習最適化アルゴリズム開発を担う。一般社団法人WiSE機構は、実証PMO、現場運営、参加者導線設計、評価運営、成果物化、横展開設計を担う。

この体制の強みは、理論、測定、技術、現場、成果物化、横展開が分断されていない点にある。AI教育ラボが設計し、WiSE機構が現場で回し、その現場知が再び設計へ戻る循環を最初から組み込んでいるため、PoC止まりになりにくい。

提案代表には地域課題分析ワークショップ、探究型授業、TSPモデル電子書籍研究、AI教育、地域連携の実績があり、本提案は単なる着想ではなく既存研究と実装の延長線上にある。

14. 参考文献

ユーザー提供資料『未来の学びの基盤20260311.pptx』におけるWiSQ Coach 4領域21項目構成。

付表:SQ 4領域21項目

領域項目定義行動例主な観測ソース
SI(個人知)共感力相手の感情や立場を把握し、相手が感じている困難・期待・不安を自分の判断に反映できる力。協働相手の発言意図を汲み取り、対話のトーンや役割分担を調整する。振り返り記述、対話ログ、教員観察
 自己認識自分の強み・弱み・感情状態・認知の癖を把握し、行動を調整できる力。『自分は情報収集には強いが要約で詰まりやすい』と認識して作業配分を変える。自己評定、振り返り、学習ログ
 影響力他者に働きかけ、場を前向きに動かし、チームや学習集団の行動変容を促す力。議論が停滞したときに論点を整理し、次の一歩を提案する。対話ログ、教員観察、成果物過程
 啓発力他者の学びや気づきを引き出し、相手が自発的に前進できるように関わる力。一方的に答えを教えるのでなく、相手が考えやすい問いを返す。対話ログ、ピア評価、観察
OI(組織知)組織理解所属する集団・学校・地域・制度の目的、役割、制約、意思決定構造を理解する力。学校や地域団体の制約を踏まえて実現可能な提案に調整する。成果物、インタビュー、教員評価
 チーム達成力個人の成果ではなく、チーム全体の目標達成に向けて役割と資源を調整する力。メンバーの強みを見て役割を振り分け、遅れを補完する。対話ログ、成果物、ピア評価
 異文化・多様性統合力異なる背景・価値観・専門性を持つ他者と協働し、違いを排除せず統合する力。意見の違いを『対立』ではなく『視点の追加』として扱う。対話ログ、観察、振り返り
 倫理・信頼設計公正性、説明責任、プライバシー、相互尊重を踏まえて、信頼が持続する関係や仕組みを設計する力。AI利用時の出典確認や役割の明確化を行い、チームの納得感をつくる。成果物、ルーブリック、教員評価
SIQ(認知社会知)問題解決力社会的文脈を踏まえて課題を定義し、解決方策を構造化できる力。地域課題をデータと現場情報から因果構造として整理する。成果物、発表、教員評価
 創造力既存の要素を新たに組み合わせ、意味や価値のある新しい発想を生み出す力。異分野の知見をつなげて新しい提案を作る。初期シーズ、成果物、観察
 適応力状況変化、失敗、他者の反応に応じて方略を柔軟に変える力。計画通りに進まないときに、問いの立て方や役割分担を変える。ログ、振り返り、教員評価
 ビジョニング短期課題の先にある望ましい将来像を描き、行動をそこへ接続する力。提案の先にある地域や組織の未来像を示す。成果物、発表、インタビュー
 忍耐力困難や停滞があっても、目的を見失わず粘り強く取り組む力。再検索や再編集を繰り返しながらレポートを磨き続ける。学習ログ、AI利用ログ、観察
 対立変換・メディエーション対立や誤解を生産的な対話へ変換し、関係を壊さず前進させる力。衝突した意見を二者択一でなく、上位目的から再整理する。対話ログ、ピア評価、教員観察
CI(共進知)AI協働力AIを代替者ではなく協働相手として位置づけ、目的に応じて使い分ける力。アイデア出しにはAIを使い、最終判断は人間が行う。AI主体活用率、ログ、成果物
 学習適応力自分に合う学び方を見つけ、状況に応じて学習方法を調整できる力。動画・文章・対話・AI支援を課題に応じて使い分ける。学習ログ、振り返り、自己評定
 共創意思他者やAIと共に新しい価値をつくろうとする意思と関与の持続。自分一人の正解より、より良い共同成果を目指して提案を重ねる。対話ログ、観察、ピア評価
 変化感知力小さな兆候や状況変化を察知し、行動や問いを更新する力。議論の温度低下や課題のズレに早く気づいて修正する。観察、ログ、振り返り
 価値再定義力既存の価値観や評価軸を問い直し、新しい意味づけをつくる力。『点数が高い=良い学び』という見方を越えて、社会的価値で成果を捉え直す。成果物、発表、インタビュー
 アントレプレナーシップ不確実性の中で小さく試し、資源を組み合わせ、価値創出を前進させる力。初期シーズを仮説・試作・実証へ進める。初期シーズ、成果物、活動記録
 システム思考・関係性把握個別要素でなく全体構造と相互作用を捉え、関係性から問題を理解する力。教育、地域、経済、技術のつながりとして課題を読む。成果物、発表、教員評価